窓邊に吹き込む風が
冷たく夜の匂ひを運ぶ
遠くの雲が闇に溶けてゐる
赤い月が夜空に揺れて
足元の影が長く伸びる
どうして此處に來たのか
答への無い問いを繰り返す
僕は未だ知らないふり
逃げられるなら、それでよい
罅割れた路地の石畳が
足の音を何處かに呑み込む
靜寂に溶ける呼吸の跡が
耳元に重く響いて消える
古い時計の針が止まり
隙間風が壁を揺らす
どうして此處に來たのか
答への無い問いを繰り返す
僕の聲は空に消え
行く先さへも見えない儘
遠くで誰かが呼んでゐる
近づく足音が重なる
胸の奧に刺さつたものは
儘の影の形
どうして此處に來たのか
答への無い問いを繰り返す
僕の背中を押す風が
避けられないと知りながら