風が頰を撫でて
足元をすり抜ける風の囁き
水滴が重なる音に耳を澄ます
小さな影が揺れて彈ける
遠くに浮かぶ光る糸模樣
答へを知らない靜かな聲
一瞬ごとに變はる輪廓
ほら、風の隙間に漂ふ音
揺れる草が囁く豫感
跳ねる波紋が空を描いて
その景色が新たな始まり
足跡を隱す濕つた土の匂ひ
轉がる石が音を返す
誰も見たことの無い小さな花
その影が淡く揺れる
目を閉ぢるたび感じる形
手が屆かない場所の響き
ほら、葉の端に零れる輝き
動く枝が呼び寄せる氣配
溶けるやうに響く鼓動
その音が未來を紡ぐ
靜けさの中で跳ねる雫
輪を描いて戻る記憶
ほら、空の裂け目に浮かぶ道
柔らかな線が重なり合ふ
彈ける音が響くその瞬間
新しい景色が今を作る
風が靜かに頰を過ぎて行く